「あのこわたしたちの子どもなのよ」やっと分かった大島弓子のダイエット
大島弓子さんの「ダイエット」という漫画。
ダイエットというと、細くなるために食事を制限するイメージですが、これもそういう話です。
ただ、扱っているテーマがもっと重たい。
摂食障害、愛情飢餓、といったことが、淡々と描かれています。
これを初めて読んだのは中学生の時で、
当時はそんな話だとは気づきませんでした。
物語の終盤にこんなセリフがあります。
主人公の友人 数子(かずこ):
「あのこ あたしたちの子供なのよ」
「五歳児くらいその辺でウロウロしてるの 福ちゃんって」
「その上飢餓状態なの ハートがね」
「あたし あの子を育てるつもりだわ」
あの子というのは主人公 福子(ふくこ)のことです。
当時、ここの意味が全く理解出来ませんでした。
どうして高校生の友人のことを自分の子どもというのか、五歳児その辺でウロウロしてるって一体どういうことか。
10年くらい経って、
「毒親問題」「母娘問題」「機能不全家族」といった考えを学んだ今、ようやく分かりました。
主人公の福子は、家庭環境が複雑で、親から満足に愛された記憶がありません。
そのため、身体的には高校生で頭も良いけれど、精神的には五歳児あたりで成長が止まっています。
精神年齢は愛情によって育つんですね。
友人の数子は、福子の行動に振り回され、疑ったり訝しがったりしながらも、そのことに気づきます。
そして、「あの子を育てる」という宣言をします。温かいです。
よって、中学生だった自分の疑問に答えるとしたら、こうなるのではないかと。
「あのこ あたしたちの子供なのよ」
→福子は数子とその彼を心のよりどころ(疑似両親)としている
「五歳児くらいその辺でウロウロしてるの 福ちゃんって」
→福子の精神年齢は五歳児あたりで止まっている
「その上飢餓状態なの ハートがね」
→精神的には愛情に飢えている小さな子供の状態
「あたし あの子を育てるつもりだわ」
→福子の状態を理解したうえで、今までの友人関係を続けていく、または成長を見守るという決意
大島弓子さんの漫画は、登場人物のセリフがどれも客観的でユーモアがあり、悲観的なところがありません。
絵も線の少ないふんわりした感じなので、重いテーマもさりげなくサラリと軽く読めるのですが、それがかえって話の深みを増している気がします。
読後の余韻がすごいんです。
私も不安になったりイライラしたりすると
無性に何かを食べたくなりますが
それは心の穴を埋めるための代償行為なんですよね。
心の中に福子がいるなら、数子も同居させたいところです。
何が言いたいかというと、推しの漫画です。共感してくれる方がいると嬉しい。