風邪をひろう
久しぶりに熱を出した。
駅ではたくさんの人のたくさんの咳やくしゃみの音を聞く。
不快だと思う。
風邪を引くのは電化製品でいう故障のようなものだと思っていて、人間の咳は不良品の故障音と同じようなものだと。
そんな不快感を貯めていたら、自分も風邪をひろってしまった。
野口整体では、風邪は経過させるものと説いている。野口整体の創始者、野口晴哉先生は風邪を引いても呼吸の仕方によって数時間で治してしまうらしい。
私はそんな呼吸の熟練者ではないから、1日経っても、2日経っても、風邪はまだ抜けない。
いつも喉からやってきて、鼻を通り、時に咳になって抜けていくのが通常のルートだ。
だが今回は、正月の普段食べないような豪勢な食べ物が効いたのか、急な発熱から始まった。
熱が出ると、途端に心細くなる。
子どもの頃、母親が看病してくれたことを思い出す。子どもに戻りたい、あの完全に守られた安心感を再び感じたいと、私の中の大部分を占める子どもの部分が、いつも蓋をされている暗い部分から這い上がってくる。
旦那がごはんを作ってくれた。
だが、そんな子どもに還りたい願望に取り憑かれていたからか、私の態度が彼の不興を買ったらしく、「君といると子どもを育てているみたいだ。夫婦とは思えない」と言われてしまった。
申し訳ない。
そしてやはり、あまり良いことではないと感じつつも、子どもに戻りたいとなお強く思ってしまうのだった。
自分に子どもができたら心持ちが変わるのだろうか。